FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年3月2日放送

今回は伊勢市にある『河崎商人館』の事務局長、西城利夫さんがお客様です。
世古と呼ばれる路地が多いのが河崎のまち。
ここに入れば生活している人たちの暮らしが見えてきます。

は酒問屋の場所が商人館、広さは600坪

普通の家は人が住んでいますから中を見ることはできませんが、『伊勢河崎商人館』は江戸時代から300年以上続いてきた酒問屋を博物館として公開しています。
広さは600坪ありまして、今となっては一番大きな建物と庭でございます。
川のすぐそばに蔵がありまして、蔵と母屋の建物の間に道が通っています。
それがこのへんでは一番広い道だったんですね。
入り口はそんなに広くなくても、奥行きがあります。
河崎の通りの特色としまして、間口よりも奥行きで面積をとっています。
どういう基準であったかというと、船が蔵の前に停まるので、船一艘入る幅が一軒の家の間口であったと云われています。
お酒も江戸時代ですから、船で愛知県から送ってきたことも多かったようです。
もちろん三重県内のお酒もありましたが。
明治に入ると灘のお酒が入ってくるようになりました。
灘の酒は400年ほどの歴史がありまして、江戸時代には今の兵庫県から江戸送りだったのが、明治に入ると河崎に入ってくるようになりました。
河崎を経由して、内宮や外宮に運ばれたんですね。
白鹿といいまして江戸時代は神宮の御料酒でございました。
明治になって白鷹さんができましたが、もともとは白鹿でございました。

 

スサイダーは高等飲料と言われていて非常に高級品だった

河崎商人館の元の建物は酒問屋だった小川酒店で、明治42年から昭和50年くらいまで作られていたのが『エスサイダー』です。
とてもハイカラな名前ですが、この『エス』が小川酒店の『小川』から来ているんです。
小川三左衛門さんの『S』を取って、エスサイダー。
だから『三左衛門サイダー』でございます。
非常に高級品だっため、当時は『高等飲料』と呼ばれていたそうです。
高等とは今で言う高級品のこと。
どこが高級かというと、実はお砂糖が入っていることなんです。
明治時代はまだまだお砂糖が貴重だったため、お砂糖が入った飲料を『高等飲料』と呼んだんですね。
明治や大正時代には、まだ子どもにはサイダーは難しかったようです。
でもサイダーと同じようなもので『ラムネ』がありました。
ラムネとサイダーの違いは瓶なんですが、ラムネは同じ炭酸でも少しお値打ちになっていました。
だから子どもさんはラムネを飲みました。
そしてサイダーは大人用の飲み物だったそうです。
明治のサイダーの味も、『伊勢河崎商人館』で味わっていただくことができます。
サイダーの違いは砂糖で、ここで復刻したサイダーに使っている砂糖は、粉砂糖。
けっこうすっきりした味わいのサイダーです。
あまり甘くなく、適度な爽やかさがあると、飲んだ方にも言われます。

 

勢で誕生した紙幣と言われている山田羽書

初めて聞く人もいると思いますが、山田羽書というのは日本最古の紙幣と言われているものです。
400年前に山田の町の人たちによって生み出され、およそ250年間、伊勢周辺で流通したのが、この山田羽書。
山田は今の伊勢市のことです。
それまでの貨幣は金や銀、鉄などの金属だったのに対し、『山田羽書』は紙です。
『羽のように軽く、しかも使うとすぐに消えてします』というわけで、『はがき』に『羽』という文字を使ったようです。
伊勢全体は小さい町ですが、多いときには年間500万人が伊勢に歩いて来ました。
当時、伊勢に500万人が来たということは、日本の人口の6人に1人が来たという計算になります。
伊勢神宮は偉大ですね。
伊勢神宮の方々の食べ物や物資などは伊勢だけでは賄いきれなかったので、不船を使って運んできた場所が河崎の町でございます。

 

土交通省のふるさと大賞を受賞!

お伊勢参りの参拝客を支えた『伊勢の台所・河崎』では、今も切妻入りの町屋が並び、町歩きが楽しめます。
建物が古くなってくると、商売をしていたところも、建物を使わなくなって来ます。
そこで、住まいの部分ではなく、昔お店だった部分に新しいお店を開店し、カフェや小物の販売などもやっています。
昔からの伝統的な建物を使って新しい商売をしてもらっているところを、一度見に来てほしいですね。

商人館を中心に20年近く活動を続けている『伊勢河崎まちづくり衆』が、その活動に対して国土交通省の『ふるさと大賞』を受賞しました。
これも私たち『まちづくり衆』だけでなく、河崎に住んでいる方や、訪れてくれる方がいてこそのまちづくりになるので、これからもよろしくお願いします。
住んでいる方々が歳を重ねると同時に、子どもたちも大きくなっていきます。
成長した子どもたちに町の歴史や文化を知ってもらうことによって、町に対する愛着も生まれてきます。
そうすると町を見る見方も変わってくるのではないでしょうか。
町は生きています。
人が動いて変わっていくことで、また新しい町になっていくと思います。

ここに暮らしていて、風を感じることのできる町が『河崎』。
思いが伝わってきます。
そういうところを感じていただけると嬉しいですね。